エルコスがやってくる

 

 リサイクル大国であるドイツは、かつて森を黒死させた環境汚染大国でした。あのイギリスもアメリカも、かつては贈収賄が当り前の汚職政治大国でした。いまの日本は全てにおいて最悪であり、いみじくも世紀末現象と呼ばれています。光の下が最も暗いように栄光の陰に矛盾が蓄積され、繁栄が去った後には産廃ゴミのように放置されるのです。かつては必要がある時に救世主や世直し人が出現しました。今度は科学技術が生み出したエルコスが人の心を洗い浄めてくれるのです。ロボットの研究家・ストーン博士の願いは子供たちの虚ろな瞳に輝きを取り戻すこと。生活の中で忘れてしまった愛や夢や希望を甦らせることです。

 そんな思いのすべてを込めて、博士は一体のロボットを作りました。アンドロイド・エスパー・ロボット「エルリック・コスモス」通称エルコスと名づけられます。科学とは夢を現実にして行く力と博士は理想を語ります。そんな博士の研究の成果であるエルコスは、単なる便利なテクノロジーとは言えません。博士の夢の化身なのです。さてエルコスが送り込まれたのは、「落ちこぼれ」を引き受け徹底的な管理教育を行っているユートピア学園です。エルコスは掃除や洗濯から教育と躾までを一台でこなせる合理的なロボットとして嘱望されます。しかしストーン博士はエルコスに人間の「心」を託しました。

 いじけて頑なに心を閉ざしていた生徒たちも、いつしかエルコスに心を開いて行きます。そうなることに面白くないのは学園の教師たちです。子どもたちばかりでなく学園の経営者までもが、すっかりエルコスのペースに乗せられてしまったのに業を煮やし、エルコス追い出し作戦に取り掛かります。そのために、ただ一人エルコスに反発する生徒ジョンをうまく騙して味方に着けることにしました。そしてエルコスのエネルギー源に異物を混入させて、飲ませることに成功します。エルコスはこれを体内に入れると気化し、消滅してしまうのです。自分を助けるためにエルコスが悪事に利用され、しかも消滅の危機に陥ったことを知ったジョンは、初めて失いかけていた大切なものに気づかされます。

 エルコスに託したストーン博士の夢は叶えられるのでしょうか。そしてロボット・エルコスは、本当に消滅してしまうのでしょうか。

 

 

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