高らかな囀りと静かに囁く声
〜ジャン・アヌイ作「ひばり」L’ALouette〜

 

 旧約聖書に記された一人の予言者エリヤ。イスラエルに流布した異教神バアルの崇拝者と戦い、イスラエルの王からも生命をねらわれて荒野に一人落ちのびて行く孤高の予言者エリヤ。四十日四十夜の彷徨のすえホレブの山に隠れ潜み、「ここで何をしているのか。」と静かに囁く声に喚起される。激しい風と地震と火柱の中から聴こえた声に従い、国たみを解き放つ為にイスラエルに帰るエリヤ。そして、野にいるときは草木に紛れその存在すら見いだすことのできないヒバリも一度天空に舞い上がると、高らかに囀るヒバリ。

 旧約聖書の時代から現代まで、ときに「静かに囁く声」で歴史に彩りが付け加えられてきています。この作品も「静かに囁く声」に命じられた『ひばり』が天空高く舞い上がり「高らかに囀り」、人々を奮い立たせて故国を勝利に導いた「伝説の少女」の物語です。

 フランスの一寒村に住み、羊の番をしていた少女に「フランス王を救え、王国を取り戻せ」と静かに囁く声が命じます。『ジャンヌ・ダルク』13才の少女にとっては余りにも恐ろしい使命です。予言者エリヤと同様に必死に辞退しますが、声は聞き入れずその小さな肩に王国の運命を背負わせます。信仰心に厚いジャンヌは強い信念をもって、率いる軍隊を連戦連勝に導き、フランスの英雄として国民から讃えられます。しかしフランスを代表する現代劇作家の一人ジャン・アヌイが、人間として苦しみ、世俗を拒否する一人の少女として描いたのがこの『ひばり』です。

 

 

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