[ 一味違う回答コーナー ]

 

株式会社 野口五郎会計事務所
月刊「会社経営と税務」誌より一部抜粋


心理学と精神保健ガイド

 

 

 

 私は大学で心理学を教え、大学の保健管理センターで学生と教職員の為の精神 衛生相談を担当し、大学病院の小児科で神経症と心身症の外来を担当しています。精 神分析を専門とする臨床心理学者ですが、その存在を知っている人は殆ど無くカウン セラーと呼ばれることが多いので、カウンセラーと名乗ることにしています。登校拒 否や家庭内暴力など思春期挫折症候群と呼ばれる神経症の増加は社会現象とも言われ るほどですが、近頃はその結果の青年期無気力症の増加の方が問題になっています。

 登校拒否や家庭内暴力が思春期の嵐のように吹き荒れた後は人生の目標を見い出せ ないまま迷う意欲も失ってしまう、気の毒な状況を数ヵ月から数年間も続けることに なってしまっています。 無気力状態やうつ状態に陥っても一生そこから抜け出せないという訳ではありませ んが、人生の大切な時期をむなしく過ごすのは大きな損失です。しかしながら、無気 力状態やうつ状態にある人は眠っている時が一番幸せと言いますから、趣味のような ものに興味を持ってもらうとか、生活そのものに意欲を持ってもらうことは至難の業 といえます。

 なにもやる気が起こらなくて布団を被っているような人には、音楽を聴くことを勧 めています。勧めても聴く気にならないと言いますが、ほとんど努力を必要としない ことに気付くと聴き始め、バッハなどのクラシック音楽を好んで聴いているようです。 TVは見る気にならなくてもビデオで映画は観ていられるという人には、映画を手当 り次第に観ることを勧めています。ドラマや小説で多くの人生を知り参考にして、近 い将来の自分に同一視できるモデルを探し出して欲しいと思っています。

 学校や会社に復帰できるほど快復はしていなくても、何かして見たいと意欲を示す 人には旅行を勧めます。温泉など国内の身近な処への旅行でも大いに結構ですが、外 国へ旅行して異なった価値観と人生観をもつ人たちに出会って欲しいと思っています 。海外に出て多くの物事に出会うと、眼からウロコがポロポロと幾枚でも落ちる体験 が珍しくありません。可愛い子には旅をさせろとは、よく言ったものです。

 臨床心理学に世間の期待が、これほど寄せられたことはないと言われています。想 像や了解を超えた事件が多発して、そのたびにテレビ局や新聞社は心理学者に意見を 求め動機や背景を知ろうとします。著名な先生のコメントですからさぞかしと期待す るむきもありますが、感心しつつも誰でも言いそうな内容に意外な感じもするのでは ないでしょうか。しかし誰もがそう感じたとしても、不思議なことではありません。  事柄が見近で無縁では無いために、誰もが "一言" を持っているのです。

横丁のご隠 居さんが言うことや、巷のうわさ話に精通した世話好きおばさんが言うことさほど違 わないのは、たとえ「解釈」したとしても「断言」は出来ないのです。当人以外は誰 も、" 当たらずとも遠からず "のコメントしか出来ないのは仕方ないのです。ただし 「素人の発言」と「玄人の発言」の違いは、その「発言に責任を持つ」か持たないか に、大きな違いがあるのです。

 

 

 

 

 

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