タロウ父さんとハナコ母さんから、14匹の子供たちへ

『たろはなだより』1991.4〜1992.2

 

 

 

 

 タロウの許婚だったハナコの初潮は、タロウがハナコのおしりやオシッコをしきりとなめるので気づきました。マウンティングもしましたが、交尾の意志は感じられず、夢にも妊娠など思いませんでした。厳寒にむかい栄養価の高い食事をさせていたので、急激な肥満をその効果の表われと素直に喜んでいました。しかし、しぐさや行動に変化が見られ、どことなく”おしとやかな”女性を感じさせるのです。妊娠ではないと思いながらも不安となり、病院の臨床繁殖科を受診しました。診察の結果すでに「妊娠後期」に入っているとの事でした。超音波検査装置のモニター画像には複数の小さな心臓の鼓動が映し出されています。重なりあってしまっていて数を確認できないほど大きくなっているとの事で、1週間以内に出産かもしれないといいます。

 出産当日の朝は食餌をしないといいます。しかしハナコはいつもの食欲でぺろりとたいらげました。食後の散歩に出て途中から家に引き返そうとするので、いよいよかと思い急いで家に戻りました。初産は長時間におよぶと聞いていたので、そのように準備をはじめると産室の中から「キャン」というかん高いハナコの声が聴こえました。初子が産道を押し広げて抜けるのは、かなりの激痛をともなうようです。産み落とした直後はしばらく事態を飲み込めず呆然としていました。(ハナコの名誉にかかわるので内緒ですが、初子がもにょもにょ動いたらビックリして、初子にむかってワンと吠えました。)優しく声をかけ撫でてやると落ちつき、羊膜にくるまれたままの子供を舐め始めました。羊膜を舐め取り、臍帯をかじり切りました。しばらく身体を横たえ休養をし、陣痛が始まるとお尻を持ち上げ後肢でふんばりスルリと産み落とす繰り返しです第2子めからは”排便”程度のもののようで、勘違いしたのかトイレで産み落としたこともありました。

 

 

 生まれた子ども達は元気そのもので、オッパイを強く飲まれ過ぎたためか、乳腺炎を起こしたハナ母さんは子ども達に近寄ろうともしません。哺乳瓶でミルクを充分飲ませたあとにオッパイを吸わせるのが、丁度よいようです。子ども達の下腹を強く押し舐めて排尿便を促し、ウンチやオシッコを舐め取るのが役割であると思っているようにタロウ父さんは世話します。子ども達を抱え込みのべつ舐めまわしていると、子ども達は下腹に吸いつきます。この間のタロウ父さんの下腹は、集中的に蚊に食われたかのように赤く腫れ上がっていますが、”子育て犬”の面目躍如といったとこでしょうか。

 初めての出産と子育ては不安と緊張で無我夢中でした。しかし2度目となると余裕で、子ども達の新しい親たちに「子育ての経験」を伝えてあげたくなります。子ども達の成長の過程も知りたくなります。”うるさい実家”といわれそうでも、いいたくなるし、ききたくなります。そんなことから、2度目の子ども達へ出した「たろはなだより」がきっかけとなって、月刊「たろはなだより」がいつの間にか一年も続き、2年目に入ろうとしています。ここで一年分すべてを知っていただきたくて一冊にまとめてみました。

 ご笑覧いただき、2年目分も読みたくなっていただけたら大幸です。

 

 

 

ラブラドール・リトリーバー犬 = 太郎と華子の後見人 中嶋柏樹・早苗

 

 

もどる