一匹のはずなのに!獣医さんと笑いながら心臓が動いているかを確かめようと超音波で映し出すと、二つの心臓がドキドキと元気に拍動しているのです。イヌの早産は予定日より5日早いだけだったら充分育つし、一週間でもなんとかなる。しかし10日も早いと難しいのは定説です。しかし、ひょっとしたらこの二匹はなんとかなるかもと期待しました。人間の一日とイヌの一日は大分違うから昨日生まれた子どもはダメでも今日産まれた子どもは大丈夫ということもあるようです。いつもは優しい獣医さんがついでのような言い方で、2日間様子をみて産まれなかったら、3日めには出さなければと厳しいことをさらりといいます。言い方は優しくても宣告と厳粛に受け止め覚悟を決めました。ところが次の日の昼までに、三匹も産まれたのです。さらに一匹も余分に産まれたのだから、これで完全に産まれてしまったであろうと自信がもてました。

 これでハナコは助かったと思い、脳味噌がジィーンッとしびれるほど感激しました。全部産まれてしまったのだから、手術は不用であろうとの確認をしたつもりでしたが、獣医さんはむしろ一匹余分に産まれた方に関心があったようで、電話からしばらく離れたのちに、レントゲン写真をよく見たら「三匹写っていたよ」といいます。ハナコの早産事件は3日間に及び緊張をさせられました。しかし、濃緑黒色のオリモノから最初の子どもが出るまでの間は辛そうで眼光が曇ってましたが、あとは出産中とは思えないほど元気でしたので救われました。ハナコは、いままで3回のお産をなんのトラブルもなく経験しているわけですから、なぜ今回はと思ってしまいます。

 

 

 

 

 

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