その名は学生生活支援相談員

 

 

 「学生生活支援相談員」というネーミングは筆者によるものですが、文字通りの役割を持つカウンセラーを新規に採用することにしました。保健管理センターのカウンセリングルームに配置して、大学生活に馴染めないで不登校になってしまう心配のある学生の面倒を見てもらおうとするものです。心理学専修の大学院卒業生が応募して来ることが予想できましたので、学歴、資格、経歴など一切問わない募集にしました。そして「意欲」と「責任感」のみを採用条件にしました。そのねらいは見事に当たり、心理学系以外の学部卒業予定者から通信教育の社会人学生までが応募して来ました。

 個別の面接ではなくて10名前後のグループ面接とし、討論での発言内容で合否を決めることにしました。各応募者がどのような心構えを持って来たか、どんな構想を持って仕事をするつもりでいるか確認したかったのです。応募者たちに、カウンセリング・ルーム内の印象を尋ねますと、異口同音で明るい、綺麗、広い、日当りがよい、眺めがよいなどと不動産会社の営業部員のような発言しかしません。さすがに大学院卒業生は、静かで座り心地の良い応接セットなど、好ましいニュートラルな環境が確保されていると教科書的な発言をします。掲示されていた「学生生活支援相談員」を一目見て、当然それを理解しての応募と考えていましたが、彼らが想像する仕事内容は、従来のように部屋に詰めていて学生が相談に来たら相談にのるというスタイルから一歩も踏み出していません。

 学内で孤立している学生や、アパートに閉じ篭っている学生たちに働き掛けて、時には働き掛けを拒絶する学生に対しても良好な交流を作る努力をしなければなりません。しかし、そのような技術は学んでいないからどうして良いか判らないと言います。ところが、当って砕けろと言わんばかりになんとかなると考えているようなのです。無謀な働き掛けで傷つくのは学生ですが、傷ついた学生をみて敗北感を味合わされるのはカウンセラーなのです。そのために、傷つけたり事故にならないよう指導を受けながらの慎重さが求められる仕事です。

 とはいえ、営業マンやセールスレディが飛び込みで営業し、迷惑がられても通い徹して、ついに契約を取るという努力をなぜ真似ることが出来ないかと思います。初対面だったら挨拶し、親切にされたらお礼をいう、当り前のことを当り前することから人間関係は作られるはずです。友だちを作ったり恋愛をしたりするメカニズムを意識化して、学生の生活支援相談に応用出来なかったら役立たないのです。

 

 

 

oak-wood@lovelab.org

http://www.lovelab.org

 


もどる