"なんちゃって高校生"の不安

 

 近ごろ、なにかと高校生の言動が話題になりますが、もちろん高校生といっても女子高校生のことで、男子高校生が話題になることは先ずありません。"なんちゃって高校生"も女子高校生で、中退した高校の制服を着て盛り場に出没しています。定番のルーズ・ソックスに制服のスカートをはいていますが、上衣はつけず白いブラウスかワイシャツにセーターかチョッキといういでたちです。ほとんど私服風にしちゃったときは紺の布製のカバンをもち、さりげなく高校生風をアピールしています。それは現役の高校生が見たら高校生でないことが分かるようになっていて、ふつうの人たちからは高校生に見えるようにした工夫のようです。

 "なんちゃって高校生"と呼ばれている人たちは17才ぐらいの高校生年齢ですが、いつになっても卒業の時期が来ないので、そのまま二十歳(はたち)を過ぎた"なんちゃって高校生"もいると現役高校生たちは言っています。もっとも"なちゃって高校生"という言い方は現役高校生たちが名付けたようですが、彼女らが尋ねられて「なちゃって」と言ったかどうかは不明です。

 "なんちゃって高校生"も現役高校生も今が最高だといいます。そして、この先に良いことなどないように思えるといいます。プリクラで親しい友だちと記念撮影をしてシールに今の自分を残すのも、使い捨てカメラをいつもバッグの中に持っていて、手あたり次第を写真にしてアルバムに残しているのもそのためでしょう。若い人に限りませんが、誰も自分を表現して注目を浴びたい気持ちを持っています。容姿がやや端麗であったり、学業がちょっぴり優秀だったり、運動能力にいくらかでも秀でていたらさして苦労はいりません。ところがどれにも該当しない多くの人たちは一目見て分かるユニフォームに期待します。

 しかし看護婦やスチュワーデスなどになるにも大変で、なってからも大変であることが分かったころに、高校生の制服に思わぬ価値があることに気付きます。"コギャル"とは高校生のギャルのことで、低成長時代の昨今は「高校生の女の子」がもてはやされることになったのです。 かつてバブルの頃は高級ブランド品をバンバン購入してくれる「24才独身OL」がもてはやされましたが、今や超薄利多売の良きターゲットとしてチヤホヤされてその気になっていて欲しいのです。

 かつて女子高校生の制服図鑑が出版されたのが火つけ役となり、多くの高校が生徒たちに好まれ易い制服を作りました。制服は着たら即それらしく見えるのが良いところで、説明の必要もなくそれで通るところが魅力なのでしょう。とんでもない現象として「援助交際」なんてものがありますが、女子高校生があらゆる形でもてはやされていることは確かです。アムロやナオミふうに装った分不相応な遊興の日々は、高校を卒業するまで続けられますが、卒業した後はその「幸せ」に代わるものが見当たりません。気の毒なことですが、高校までがモラトリアム(子どもでいられる猶予期間)なのでしょう。大学生でしかも留年までしてモラトリアムを延長している者もいるほどですから、高校までで猶予期間が終わってしまうのは可哀いそうです。

 "なんちゃって高校生"にはまってしまったら、なんとなくの不安をいだきながらも"足を洗う"機会は見つけにくいでしょう。周囲に親身になって忠告してくれる大人のいない不幸と重なって、しばらくは不安を感じながらも"なんちゃって高校生"を続けて行くしかないのでしょう。

 

 

 

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