オレオレ詐欺の心理学

 

 ニュース番組でキャスターが、「オレオレ詐欺」についてコメントしていました。ご存知の通り、赤の他人が突然に電話をかけて来て、オレオレと名乗ります。それを受けたお年寄りの子や孫になりすまして現金を振り込ませて詐取します。

 オレオレと名乗って、出た相手が「誰々ちゃんか!どうしたの?」と子や孫の名前を言って応じたら、交通事故などで緊急にお金が必要になり困っていると訴えるのです。そして、数十万円を銀行口座に振り込むように誘い、振り込んだら続けて数回振り込ませるようにして、被害額が数百万円にもなってしまうのです。

 なぜ「オレオレ詐欺」事件が続発するかについて、キャスターは著明な心理学者が提唱している「家庭の無い家族の時代」に原因を求めていました。確かにそう思えますし、ある建築家が指摘するように今やいつの間にか「茶の間の無い間取り」の家に住むようになってしまっています。家族の人数が座れるダイニングテーブルはあっても、塾に行くので早くに夕食を食べてしまう子どもから、残業で会社から遅く帰宅するお父さんまでが、独りで食べる「個食」が珍しく無くなっているのです。

 リビングルームにテレビを囲むようにソファーが置かれていても、観たい番組は各自が自室で自適に観ます。寝るためにだけに帰る宿のようになって、家族がルームメイトよりも時間を共有していないことは確かでしょう。まさに、橋田寿賀子さんのドラマのようです。

 そのキャスターは、お年寄りたちが身内か赤の他人かを電話の声で区別がつかないほど関係が希薄になっていると結論づけていました。しかし的外れとまでは言いませんが、お年寄りの孤独な日々にまで視点が及んでいないように思えます。たとえ赤の他人であると気づいたとしても、指定口座に振り込む者はいるでしょう。いかに相手にされたい気持ちが何にも勝るかは、かつての豊田商事事件からも類推は可能でしょう。 

 

 

  

 

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