性差の人間史

 

 チンパンジーのアイちゃんと息子のアユムくんは、難問を一瞬にして解いてしまうほど知能が高いので知られています。後見人である霊長類研究所の松澤先生は、最近の研究で人間とチンパンジーの遺伝子配列に殆ど違いが無ことから、区別するのは間違いであると彼らを人間扱いをしています。

 確かに僅かな違いしかないと思いますが、その僅かな違いが決定的な違いでもあるとも思います。人類が霊長類よりも一歩先に出たことで、それぞれの文化と文明に格段の差があることは確かです。

 なぜ人間のみがそれに突出したかは大脳皮質の肥大化によりますが、その大きくなり過ぎた頭で産道を回転してもくぐり抜けられなくなり、他の動物たちに比べて1年も早い未熟児で産まれるしかなくなったのです。その為に母親は育児に縛られ、父親は家族の生存保障が役割になりました。サバンナのライオン家族を想像して下さい。母親ライオンは育児と獲物確保に専念していますが、父親ライオンは外敵に備えてガードマンに徹しているのと同じです。

 ところが、荘園の用心棒だった武士が征夷大将軍となって一国の政権を掌握したように、腕力の強い父親は封建家庭に君臨して家族の生活保障する代わりに唯我独尊を押し付けて、それを当然とする社会を数百年も維持したのです。

 しかし、今や技術革新で腕力は不要となりました。そしてIT革命でそれが決定的になりました。ダンプカーを運転するのに免許が必要でも、腕力が必要ないことはご存じの通りです。インターネットの恩恵を享受するにも、パソコンのキーボードを圧す力があればことは足ります。腕力が強いと立場が強かったのは過去のものとなりました。体格と腕力に自信が無くても、その気さえあれば機会が得られる時代になったのです。

 アマゾネスのような剛腕女性が男性を隷属させる例は世界中にありますが、一部族単位程度のものであって国家レベルのものはありません。人間の歴史は、腕力の強い男性に支配されて来ました。力の弱い女性と男性が支配されましたが、今や「力こそ正義」派の支配力は失せて、ピリ辛の「小粒の山椒」派が台頭できる時代になったのでしょう。

 

 

 

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